BMIと慢性腎臓病におけるダパグリフロジンの効果
今日は、慢性腎臓病患者さんに対してSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、商品名;フォシーガ®︎)を使用すると、BMIが高いほどメリットが上昇するか?ということについて調べた論文を調べてみたので載せてみます。
目的: 2型糖尿病の有無にかかわらず、慢性腎臓病(CKD)とアルブミン尿を有する患者におけるダパグリフロジンの効果を、体格指数(BMI)で層別化して評価すること。
方法: 推定糸球体濾過率(eGFR)25-75 ml/min/1.73m²および尿中アルブミン・クレアチニン比200-5000 mg/gの成人患者4304名を、ダパグリフロジン10 mg/日またはプラセボに無作為に割り付けた。主要な結果は、eGFRが50%以上持続的に低下すること、腎不全、または腎臓または心血管原因による死亡の複合的なものとした。二次的な結果には、心血管死を除いた腎複合エンドポイント、心血管複合エンドポイント(心不全による入院/心血管死)、および全死亡率が含まれた。参加者は世界保健機関(WHO)のBMI基準に基づいて、痩せ/理想(<25 kg/m²)、過体重(25-<30 kg/m²)、1度肥満(30-<35 kg/m²)、および2度/3度肥満(≥35 kg/m²)に分類された。
結果: 無作為化された参加者4296名(99.8%)のうち、888名(20.7%)、1491名(34.7%)、1136名(26.4%)、および781名(18.2%)がそれぞれ痩せ/理想、過体重、1度肥満、および2度/3度肥満に分類された。中央値で2.4年間の追跡調査が行われた。主要および二次的エンドポイントにおいて、ダパグリフロジンの利益は基準BMIにかかわらず認められた。痩せ/理想、過体重、1度肥満、および2度/3度肥満グループの参加者における主要複合エンドポイントのダパグリフロジン対プラセボのハザード比(95% CI)はそれぞれ0.60 (0.43, 0.85), 0.55 (0.40, 0.75), 0.71 (0.49, 1.04), および0.57 (0.37, 0.87) であった(交互作用P = .72)。
結論: CKDおよびアルブミン尿を有する参加者において、2型糖尿病の有無にかかわらず、ダパグリフロジンの腎および心血管に対する利益はBMI全体で一貫して認められた。
◾️一言コメント
SGLT2阻害薬は尿糖を出すことで血糖コントロールを改善させる薬剤で、血糖コントロールだけではなく、心保護・腎保護効果も数多く報告されている薬剤で、この研究はDAPA-CKD試験のサブ解析です。
元々、米国腎臓データシステム(USRDS)での解析では、「理想的な」体組成(BMI 18.5〜<25 kg/m²)の人と比較して、BMI 25〜<30 kg/m²(「過体重」)、30〜<35 kg/m²、35〜<40 kg/m²、および≥40 kg/m²(「肥満1、2、3度」)の人々における治療を要する末期腎不全のリスクは、それぞれ1.87倍、3.57倍、6.12倍、そして7.07倍高いことが報告されていて[Ann Intern Med. 2006 Jan 3;144(1):21-8.]、体重減少効果をもつSGLT2阻害薬の心保護・腎保護効果は体重が増えるほど増強されるのでは?という仮説の下、行われたのがこの論文の結果です。結果としては、特にBMIによる違いはなしということでした。アジア人は痩せ型なので、BMIの基準もそれに合わせてアジア人だけ解析していますが、同様の結果でした。
ただ、有効性が変わらないというだけなので、必要な患者さんには処方して腎保護していかないとですね。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)