閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者におけるCPAPの体重への影響
ダイエットの秘訣に「良質な睡眠をとること」を挙げている人がよくいます。確かに、勤務医時代、当直で睡眠時間が削られると、お腹が空いていないのに食欲が爆発して食べてしまって体重が爆増してしまいました。この経験は決して自分だけでなく、多くの医療従事者が口にします。
肥満は閉塞性睡眠時無呼吸症候群（obstructive sleep apnea syndrome: OSAS）の原因になることが知られていて、体重が10%増加すると、AHI（Apnea Hypopnea Indexの略。1時間の睡眠中の無呼吸および低呼吸の合計回数）が32%増加して、中等症〜重症のOSASのリスクが6倍になるそうで、逆に体重が10%減るとAHIが26%も減少するようで、体重とOSASは切っても切れない関係にあるようです。自分の臨床の疑問として、「OSASの患者さんにCPAPを施行すると、睡眠が良質になって体重が減ったりするのかな？」というのがあって、文献を調べてみました。いくつかの研究では、減るというのがあるようですがこれは多くの研究をまとめてメタアナリシスになります。
導入: CPAPによる閉塞性睡眠時無呼吸症候群（OSA）の治療が体重に与える影響は明確でない。本メタアナリシスは、CPAPによるOSAの治療が体格指数（BMI）および体重の変化を促進するかどうかを評価する目的で設計されたものである。
方法: PubMed、SCOPUS、Cochrane Central Registerの電子データベースを、2013年10月1日まで（その時点で未発表の論文も含む）検索し、言語の制限は設けなかった。BMIを客観的に測定し、最低4週間の治療期間があるCPAPとコントロール群を比較したランダム化試験を特定した。データは標準化されたプロトコルに基づいて2人の研究者が独立して抽出し、レビューした。
結果: BMIと体重を測定した25件のランダム化試験から合計3181人の患者を含めた。すべての研究において主に過体重および肥満の患者が登録されている。固定効果のメタアナリシスにより、CPAPはBMI（Hedges' g=0.14, 95% CI 0.07〜0.21, I(2)=16.2%）および体重（Hedges' g=0.17, 95% CI 0.10〜0.24, I(2)=0%）の有意な増加を促進することが示された。ファンネルプロットにより、出版バイアスのリスクが低いことが示されている。年齢、性別、基礎BMI、基礎体重、OSAの重症度、CPAPの遵守率、シャムCPAPの使用、研究期間、研究デザイン（クロスオーバー/並行）、研究の出所（西洋/東洋）、食事の変更や運動の推奨を含むメタ回帰分析では、体重に関する主要な結果に影響を与える単一の予測因子はなかった。基礎体重は、CPAP後のBMI増加の予測因子であった。
結論: CPAPによるOSA治療は、BMIおよび体重の有意な増加を促進する。CPAP治療を開始した過体重または肥満の患者には、体重減少のための追加治療が推奨されるべきである。
◾️コメント
結果としては、むしろ体重は増えるという結果でした。ただ、介入前後のBMIの差が、CPAP群で0.134±0.273 kg/m²（コントロール群で−0.018±0.243 kg/m²）、介入前後の体重の差が、CPAP群で0.417±0.718 kg（コントロール群で−0.096±0.718 kg）ということで、これは統計的に有意であっても、臨床的な意味合いがどれだけあるかはかなり微妙な気もします。
少なくとも、肥満でOSASになっている患者さんに、「体重が増えるかもしれないから」とCPAPを導入しないのは、心血管リスクなどの関係から違うのではないかなと思ってしまいます。筆者たちのメッセージも、「肥満・過体重の患者さんにCPAPを導入するときは、生活習慣の介入を」ということで、その通りかと思います。
CPAPによるOSAの治療は徐波睡眠を回復させて、徐波睡眠中は同化作用を持つ成長ホルモンの分泌が増加するので、CPAPによるOSA治療が同化作用を増加させるからでは？など、考察されていました。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 （総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医）
