糖尿病の薬物治療（内服治療）
糖尿病の薬物治療（内服治療）
糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態が続く病気です。
内服治療は、適切な血糖コントロールを保つための大切な手段の一つです。
ここでは、
①糖尿病患者さんに用いる内服薬の種類や作用
②私たちが処方時に考慮する観点
③内服治療する際に重要なポイント
について解説します。
1. 糖尿病内服薬の種類と作用
糖尿病の内服薬は、その作用によっていくつかの種類に分かれています。それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
①インスリン抵抗性改善系
ビグアナイド薬（メトホルミン®︎）
- 主な作用: 肝臓での糖の生産を抑える。
- 特徴: 血糖を下げる効果が安定しており、体重増加を抑える作用もあります。特に肥満型2型糖尿病の方に適しています。
- 注意点: 消化器症状（腹痛、下痢など）があり、腎機能に応じた投与調整が必要です。また、乳酸アシドーシスという重篤な病態を起こすことがあります。
チアゾリジン薬（ピオグリタゾン®︎） - 主な作用: インスリンの効果を高めます。
- 特徴: 血糖を下げる効果が安定しており、体重増加を抑える作用もあります。特に肥満型2型糖尿病の方に適しています。
- 注意点: 浮腫・体重増加、心不全のリスクがあり、当クリニックではそこまで使用していません。
②インスリン分泌系
スルホニル尿素薬（グリメピリド®︎など）
- 主な作用: 膵臓からインスリンの分泌を促進する。
- 特徴: 血糖値を下げる効果がとても強いです。
- 注意点: 一方で、低血糖を起こすリスクがあります。当クリニックでは、低血糖を起こさないためにも使用する際は、少ない用量での使用を心がけています。
DPP-4阻害薬（トラゼンタ®︎、エクア®︎など） - 主な作用: インスリンの分泌を促進し、グルカゴン（血糖を上げるホルモン）の分泌を抑える。
- 特徴: 低血糖のリスクが少なく、幅広い患者さんに使用できます。
- 注意点: 単剤では効果が穏やかで、他の薬と併用されることが多いです。稀に、皮膚の副作用を起こすことがあります。
速効型インスリン分泌促進薬（レパグリニド®︎、グルファスト®︎など） - 主な作用: 食事に合わせて膵臓から速やかにインスリンを分泌させる。 特徴: 食後血糖
- 上昇を抑えるのに効果的で、食事の直前に服用します。SU薬よりも短時間作用型で、低血糖リスクがやや低いとされています。
- 注意点: 食事を摂らない場合は服用を控える必要があります。
GLP-1受容体作動薬（リベルサス®︎）
- 主な作用: インスリン分泌を促進し、食欲を抑える。
- 特徴: 体重減少効果が期待できる新しい薬です。
- 注意点: 胃腸症状（吐き気など）が出る場合があります。
③糖吸収・排泄調節系
SGLT2阻害薬（ジャディアンス®︎、フォシーガ®︎、カナグル®︎など）
- 主な作用: 尿中に糖を排泄し、血糖を下げる。
- 特徴: 血糖値の改善に加え、体重減少や血圧低下の効果もあります。最近では、心血管リスクや腎機能悪化リスクを抑えることも報告されております。
- 注意点: 脱水や尿路感染症に注意が必要です。
α-グルコシダーゼ阻害薬（セイブル®︎、ベイスン®︎、グルコバイ®︎など） - 主な作用: 糖の吸収を遅らせ、食後血糖の上昇を抑える。
- 特徴: 食後の血糖値改善に特化。
- 注意点: 腹部膨満感やおならが増えることがあります。
2. 処方時に考慮する点
糖尿病の薬物治療は患者さんごとに異なるため、以下の観点を考慮して処方を決定します。
①患者さんの病状・血糖コントロール目標
HbA1c（過去1～2か月の平均血糖値）や空腹時血糖値、食後血糖値を基に薬の選択を検討します。軽症の場合はDPP-4阻害薬、食後高血糖が目立つ場合はα-グルコシダーゼ阻害薬を選ぶなど、状況に応じた治療を行います。
②併存症や健康状態
腎臓病や心臓病、高血圧などの併存症がある場合、それらに適した薬を選びます。たとえば、SGLT2阻害薬やGLP-1作動薬は腎臓や心臓に対する保護効果も期待できますので、過去に心疾患を指摘された人や、腎機能障害のある患者さんでは使用を考慮します。
③ライフスタイルや患者さんの希望
服薬の回数やタイミング、体重の増減など、患者さんのライフスタイルを考慮します。例えば、お忙しい方には1日1回の服薬が可能な薬を考慮します。
④副作用リスク
低血糖や脱水などの副作用リスクを考慮し、患者さんに合った安全性の高い薬を選びます。
⑤経済的負担
薬剤費を考慮し、患者さんに過度な負担がかからないようにします。
3. 薬物治療のポイント
糖尿病治療は、薬だけでなく生活習慣の改善も重要です。薬物治療の効果を最大限に引き出すために、以下のポイントを守りましょう。
①内服の指示に従う
薬の種類や服用量は、個々の患者さんの症状やライフスタイルに応じて決定されます。自己判断で中止や変更をしないようにして、何か不具合がある際には受診の時にご相談ください。
②低血糖のリスクを知る
特にSU薬やインスリン分泌を促す薬を服用中の方は、低血糖の症状（めまい、冷や汗、手の震えなど）に注意が必要です。低血糖時には、ブドウ糖やジュースなどを摂取してください。受診の時にそのことを教えてください。
③生活習慣の見直し
薬物治療だけでは限界があります。バランスの取れた食事や適度な運動を心がけることで、薬の効果がさらに高まります。
④定期的な血液検査
薬の効果や副作用を確認するために、定期的な検査を受けることが大切です。特に腎機能や肝機能に注意しています。
文責 龍華章裕 （総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医）
名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
当クリニックには、糖尿病専門医も在籍しております。
