過敏性腸症候群(IBS)の有病率:国際横断研究
今日は、過敏性腸症候群という病気がどれくらい頻度として多いかについて見ていこうと思います。最近この疾患であろう症状で受診される方が多かったので最近の研究でそのあたりを調べているものがあればと思って調べて見ました。
この過敏性腸症候群は、特に消化器の疾患がないにも関わらず、腹痛と便秘、下痢を慢性的に繰り返す病気で、主な原因は、ストレス、不安、抑うつなどの心理的要因や自律神経の失調とされています。
背景と目的:過敏性腸症候群(IBS)は、一般的な腸と脳の相互作用障害であり、患者の生活の質を低下させ、医療ニーズを増加させるため、IBSは世界的な負担となっている。推定される世界の有病率は約10%だが、国際的なばらつきがあることが示されている。本研究では、東アジアの3か国、日本(東京と福岡)、中国(北京)、韓国(ソウル)におけるIBSの有病率を比較した。
方法:上記の都市に住む20歳以上の都市部住民を対象に、インターネットを用いた横断的調査を実施した。年齢層(20代~60代)と性別が一致するように、同数の参加者(3910名)を募集した。IBSはRome III基準に基づいて診断され、サブタイプも分析された。
結果:IBSの全体的な有病率は12.6%(95%CI:11.6-13.7)であり、日本、中国、韓国間で有意な差が見られた(日本:14.9%[13.4-16.5]、中国:5.5%[4.3-7.1]、韓国:15.6%[13.3-18.3])(P < 0.001)。さらに、患者の54.9%は男性であった。IBS混合型が最も多く、他のサブタイプの有病率は異なっていた。
結論:3か国におけるIBSの全体的な有病率は、世界平均よりやや高く、中国での有病率は日本や韓国よりも有意に低かった。IBSの有病率は40代で最も高く、60代で最も低かった。また、男性は下痢型IBSの有病率が高かった。地域ごとのばらつきに関連する要因を解明するためには、さらなる研究が必要である。
◾️コメント
日本の有病率は15%ほどで、結構高いようです。一般的には、若年で女性がリスクと報告されていますが、この東アジア諸国を対象として研究では男性の方が有病率が高く、40代が最も有病率が高いという結果でした。最近有病率が増えてきているようで、食生活の欧米化や、現代のストレスが大きく影響しているようです。
ちなみに、自分も勤務医時代に罹患したことがありまして、新型コロナウイルス感染症に罹患した後に腹痛と下痢が持続して、この診断として治療したら症状が著しく軽快しました(コロナの後は、お腹か・・・となっていたので、症状が楽になった時にとても嬉しかったのを覚えています)。今はほぼ症状はなくなっています。自分のCOVID-19もそうですが、感染性腸炎後の過敏性腸症候群も問題となっています。今後もこの疾患に関して、注意して見ていかねばなりませんね。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)