先日、夕食のタンパク質摂取が夜間頻尿に繋がる可能性があることを紹介したところ、結構読んでもらったようですので、少しタンパク質にフォーカスしてみたいと思います。
実際の、診療において、タンパク質の話が出てくるのは、①「タンパク質を摂取して体重を落とすことを意識しましょうね」、という過多体重に対して食事で介入する場合と、②「筋肉が弱らないようにしっかりとタンパク質を摂取しましょうね」、というサルコペニアを危惧している場合、です。今回は、前者の部分をまとめたレビューを読んでみました。
Moon J, et al. Clinical Evidence and Mechanisms of High-Protein Diet-Induced Weight Loss. J Obes Metab Syndr. 2020 Sep 30;29(3):166-173.
いくつかの臨床試験により、推奨される食事摂取量よりも多くのタンパク質を摂取することは、体重(BW)を減少させるだけでなく、低カロリーおよび標準カロリーの食事において、脂肪量を減らしながら除脂肪体重(FFM)を維持することで体組成を改善することが確認されています。6~12ヶ月にわたる比較的長期の臨床試験では、高タンパク質ダイエット(HPD)が減量効果をもたらし、減量後の体重リバウンドを防ぐことが報告されています。HPDは、健康な成人において骨密度や腎機能に悪影響を与えることは報告されていません。腸から分泌されるホルモンの中で、グルカゴン様ペプチド-1、コレシストキニン、ペプチドYYは食欲を抑制し、一方でグレリンは食欲を増進させます。HPDはこれらの食欲抑制ホルモンのレベルを増加させ、食欲増進ホルモンのレベルを低下させることで、満腹感のシグナルを強化し、結果として食物摂取量が減少します。さらに、タンパク質の摂取により誘発される食事誘導性熱産生(DIT)の上昇、血中アミノ酸濃度の増加、肝臓での糖新生の増加、ケトン体生成の増加が満腹感に寄与します。HPDがエネルギー消費量を増加させるメカニズムには2つの側面があります。まず、タンパク質は炭水化物や脂肪に比べてDITが非常に高いこと、次にタンパク質の摂取がFFMの減少を防ぎ、減量中でも安静時エネルギー消費量を維持できることです。結論として、HPDは安全で効果的な体重減少の手段であり、肥満および肥満関連疾患を予防することができます。しかし、HPDの効果をさらに裏付けるために、12ヶ月以上の長期的な臨床試験が必要です。
◾️コメント
ダイエットでよく行うのは、カロリー制限ですが、カロリー制限は空腹感を増大させてしまい、満腹感も減少するため、リバウンドのリスクがあります。高タンパク食は、主に①空腹感が満たされることと、②エネルギー消費が増えること、によって体重減少を起こすとされています。研究によっては、血圧や高中性脂肪血症の改善と関連したと報告するものもあります。興味深いのが、安静時だけでなく睡眠時のエネルギー消費が増えることも報告されているようです。
腎臓内科の学会に出席すると、頻繁に高タンパク食の腎臓への悪影響が議論されますが、個人的には透析直前の超末期腎不全になるまでは蛋白制限はそこまで必要ないというスタンスです。蛋白というと、赤肉が発癌リスクを増やすのでは?というのもありますが、臨床現場の感覚だと、タンパク質は意識して摂取しないとむしろ摂取量が少ないことの方が多いようにも思います(炭水化物は意識していなくても多く摂取してしまいがち)。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)