睡眠障害と慢性腎臓病の双方向の関連
最近、全身のだるさを訴えられる慢性腎臓病(CKD)の患者さんで、精査をすると睡眠時無呼吸症候群(SAS)であることが判明した例が数例いらっしゃいました。元々、CKD患者さんの睡眠障害の割合が高いことが知られていて、45%ほどが不眠という報告もあります。そこで、今回は睡眠障害と慢性腎臓病(CKD)との間に双方向の関連があるかどうかを評価することを目的として論文を見てみました。結論としましては、睡眠障害とCKDの両者が相互に影響を及ぼし合っていることがわかりました。
背景
発表された研究では、慢性腎臓病(CKD)と睡眠障害との関連が示唆されているが、この関連の具体的な性質については一貫して説明されていない。この関連性を明確にすることは、これらの疾患の相互作用に対処するためのエビデンスに基づいた介入を促進する可能性がある。こうした介入により、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)がCKDを悪化させるのを防ぎ、CKD患者のOSA発症リスクを減らすことで生活の質を向上させることができる。したがって、このメタアナリシスの目的は、睡眠障害とCKDの双方向の関連を評価することである。
方法
PROSPEROに登録されたプロトコルに従い、3人の盲検査者がMedline/PubMed、Embase、Cochrane Library、およびCINAHLデータベースを用いて、睡眠障害とCKDの関連に関する観察研究の系統的レビューを実施した。メタアナリシスはリスク比を用いて行われた。
結果
63の研究(26,777,524人の患者)から、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)(リスク比1.68、95%信頼区間1.45〜1.93)、アルブミン尿(リスク比1.54、95%信頼区間1.18〜1.99)、むずむず脚症候群(RLS)(リスク比1.88、95%信頼区間1.48〜2.38)、および不眠症(リスク比1.24、95%信頼区間1.01〜1.54)がCKDと有意に関連していることが示された。また、OSA(リスク比1.77、95%信頼区間1.56〜2.01)と新たに発症するCKDとの間にも有意な関連があった。OSA(リスク比1.74、95%信頼区間1.55〜1.96)、RLS(リスク比1.73、95%信頼区間1.32〜2.25)、および不眠症(リスク比1.14、95%信頼区間1.03〜1.27)は、CKD患者と健康な対照群を比較して有意な関連が認められた。さらに、CKDは新たに発症するOSA(リスク比1.60、95%信頼区間1.35〜1.89)とも有意に関連していた。
結論
閉塞性睡眠時無呼吸とCKDの双方向の関連は、CKDの異なるステージ、睡眠障害の診断方法、地域に関わらず一貫して認められた。CKDと閉塞性睡眠時無呼吸、RLS、および不眠症の間には双方向の関連が観察された。睡眠障害の治療はCKDのリスクを軽減し、その逆もまた然りである可能性が示唆される。
◾️コメント
この研究では、睡眠障害とCKDの両者が相互に影響を及ぼし合っていることが示され、CKD患者において睡眠障害の管理が重要であると同時に、睡眠障害のある人に対してCKDのリスクを評価する必要があることが示されました。
では、OSAにCPAPを導入したらCKDの悪化速度が遅くなるかということになりますが、パッと調べた感じでは、残念ながらそういった報告は見つけられませんでした[1][2]。ただ、CKD患者さんは心不全を合併することが多く、CKD初期は夜間頻尿が起こります。これは、尿を濃縮する能力が減ってしまうからです。SASは夜間頻尿になるので(無呼吸時に胸腔内圧が低下して静脈灌流が増え、心拍出量が増えるため)、CKDで生じた夜間頻尿に拍車をかけている可能性もあります。これらのことから、将来的な重要な合併症を減らしたり、睡眠の質を上げるためにも、CKD患者さんにSASを合併している場合、CPAPなど適切な対応はやはり重要だと思います。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)