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非糖尿病性CKDにおけるダパグリフロジンとフィネレノンのアルブミン尿に対する加算的効果

[2024.09.21]

腎臓内科医になりたての頃、慢性腎不全(CKD)の悪化を抑えてくれるのは、ARB(当院では、テルミサルタン®︎やロサルタン®︎がよく使われます)/ACE阻害薬くらいしかなくて、①蛋白尿を有する患者さんにはその薬を入れること、②CKDで出てくるその他の問題点(貧血、ミネラル異常、ワクチンでの感染の予防など)を対応すること、③腎代替療法(透析や移植)に備えていくこと、というのが外来診療の大まかな内容でした。ところが、2010年台後半になってから、いつも紹介しているSGLT2阻害薬の腎保護効果に注目され始め、さらに最近では、新規のMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬。当院でも最近ケレンディア®︎という薬剤が処方されるようになってきております)も腎保護効果があるのではないか、というのが出てきて話題になっています。後者における腎保護効果は抗炎症効果や抗線維化効果で説明されています。

ところで、当院ではよく採尿検査をしますが、何を見ているかというと、蛋白尿が出ていないかを見ています。蛋白尿が多く出ている人ほど腎機能が悪化するので、そのフォローをすることがとても重要になるためです。上記に挙げた腎保護効果を有する薬剤は蛋白尿を少なくする効果も持っております。そこで、新規薬剤に注目して、今回はこの論文を読んでみました。

Mårup FH, et al. Clin Kidney J. 2023 Sep 26;17(1):sfad249. Additive effects of dapagliflozin and finerenone on albuminuria in non-diabetic CKD: an open-label randomized clinical trial.

背景:ダパグリフロジンとフィネレノンはアルブミン尿を減少させ、CKD(慢性腎臓病)の進行を遅らせるが、両薬剤の併用効果については未だ研究されていない。我々は、非糖尿病性CKD患者における両薬剤の個別および併用による有効性と安全性を比較した。

方法:オープンラベルの無作為化臨床試験において、最大耐用量のACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬を使用し、eGFR 25-45 mL/分/1.73 m2およびアルブミン尿150-2000 mg/gの患者(18歳から80歳)を対象とした。参加者は、フィネレノン20 mg/日またはダパグリフロジン10 mg/日を4週間投与され、その後4週間の併用療法が行われた。データはベースライン、4週間目、8週間目に収集された。

結果:平均mGFRが34 mL/分/1.73 m2、平均尿アルブミン・クレアチニン比(UACR)が469 mg/gの20名(各群10名)が対象となった。フィネレノン単独またはダパグリフロジンとの併用により、UACRはそれぞれ-24%(95%信頼区間:-36%から-11%)および-34%(95%信頼区間:-47%から-18%)減少した。一方、ダパグリフロジン単独またはフィネレノンとの併用では、それぞれ-8%(95%信頼区間:-22%から9%)および-10%(95%信頼区間:-28%から12%)の変化が見られた。全体として、8週間後のUACR変化は-36%(95%信頼区間:-46%から-24%)であった。8週間後には、収縮期血圧とmGFRがそれぞれ10 mmHg(95%信頼区間:6-13 mmHg)および7 mL/分/1.73 m2(95%信頼区間:5-8 mL/分/1.73 m2)減少した。副作用は最小限であった。

結論:フィネレノンとダパグリフロジンの併用は安全であり、アルブミン尿を有意に減少させた。併用療法の効果は、両薬剤の個別の効果の合計と少なくとも同等であり、アルブミン尿に対する加算的効果が示唆された。長期的な効果と安全性を評価するための大規模な研究が求められる。

◾️コメント

糖尿病でないCKD患者さんにこの二つの薬剤を併用することで蛋白尿(アルブミン尿)を約30-40%も減らす事ができたということです。重要な報告ですが、この治療によって蛋白尿を低下させることで、本当にCKDに対する腎保護に寄与するかというのはまた別の話で、昔の教科書では、ARBとMRAの併用は蛋白尿を減らすだけで、腎保護効果はない上に、高カリウム血症というミネラル異常が増えてしまう、と書かれていたように記憶しています。現在、FIND-CKDという試験(非糖尿病性の慢性腎不全に対するフィネレノンの腎保護効果を見た試験)というのが進行中のようなので、その結果が待たれるというのと、CONFIDENCE試験といのが、糖尿病性腎症に対するSGLT2阻害薬と非ステロイド型MRAの併用による長期予後を見ているようなので、今後注目していこうと思います。

この報告が扱った非糖尿病性のCKDに対しては、薬剤がまだまだ限定的なので、今後オプションが増えていくと良いなと思います。

愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)

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