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2型糖尿病における胃バイパス手術による体重減少後の腎臓および心血管転帰

[2024.09.04]

今日は、肥満のある2型糖尿病の方に、肥満改善のための胃バイパス手術を行うと心臓病や腎機能の悪化が改善するかというないようについて調べてみました。

Liakopoulos V, et al. Renal and Cardiovascular Outcomes After Weight Loss From Gastric Bypass Surgery in Type 2 Diabetes: Cardiorenal Risk Reductions Exceed Atherosclerotic Benefits. Diabetes Care. 2020 Jun;43(6):1276-1284.

目的:本研究では、肥満および2型糖尿病(T2DM)を有する患者において、腎機能の異なるカテゴリにわたる胃バイパス手術(GBP)後の詳細な腎臓および心血管(CV)転帰を、全国規模のコホート研究で検討した。

研究デザインと方法:我々は、全国糖尿病登録とスカンジナビア肥満外科手術登録からのデータを、社会経済変数、薬物療法、入院歴、および死亡原因に関する情報を持つ4つの全国データベースとリンクさせ、GBPを受けたT2DM患者5,321人を、同数の対照群(年齢18-65歳、平均BMI >40 kg/m²、平均追跡期間 >4.5年)とマッチさせた。術後の転帰リスクはCox回帰モデルを用いて評価した。

結果:術後の初年度において、GBP群ではクレアチニンとアルブミン尿がわずかに減少し、推算糸球体濾過率(eGFR)は安定していた。腎機能、心血管疾患、および死亡率に関連する多くの転帰の発生率はGBP後に低下し、特に心不全(ハザード比[HR] 0.33 [95% CI 0.24, 0.46])および心血管死亡率(HR 0.36 [95% CI 0.22, 0.58])で顕著であった。重度の腎疾患またはeGFRの半減の複合リスクは0.56(95% CI 0.44, 0.71)であり、非致死性心血管リスクはGBP後にやや低下した(HR 0.82 [95% CI 0.70, 0.97])。eGFR <30 mL/min/1.73m²の患者を含むすべてのeGFR層で、主要な転帰リスクは一般的にGBP後に低下していた。

結論:本データは、肥満およびT2DMを有する患者において、GBP後の腎転帰、心不全、および心血管死亡率に対して強力な利益があることを示唆している。これらの結果は、特に心腎軸(末期腎疾患への進行の遅延を含む)において、顕著な体重減少が重要な利益をもたらすことを示しており、ベースラインの腎機能状態に関係なく有益であることを示唆している。

◼︎コメント

元々、肥満が腎機能の悪化に寄与していることはよく知られているのですが、その改善が腎機能の悪化に大きく寄与するかは絶対的な結果が出ていません。

先日、SGLT2阻害薬を使用すると、肥満の人ほど恩恵を受けるのか?という論文を出しましたが、結果は恩恵は受けるけど、その程度は普通の人とそこまで変わらないという結果でした。この論文では、平均BMI:40以上の集団での検討ですが、胃バイパス術(GBP)で腎アウトカムを改善させています。そして興味深いのは、腎不全の程度が悪くてもこの効果が同様に確認できるところにあります。もちろん、GBPで糖尿病も改善するはずなので、肥満改善独自の影響は見ることができていないようにも思いますが、肥満の改善と心臓/腎臓イベント低下を見た重要な論文かと思います。

肥満のある患者さんにどのように介入するかは、最近手段が増えて、診療しやすくなっているように思いますが、まずは、自分が痩せるところから始めていきたいと思います。

愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)

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