体格指数と末期腎不全リスク
バイパス術で体重を落とすと、心・腎アウトカムが改善することを見ていきましたが、そもそも肥満が腎機能を悪化させるのか?ということについてです。
背景:青年期の体格指数(BMI)と将来の末期腎不全(ESRD)のリスクとの関係は完全には解明されていない。また、この関連が糖尿病性ESRDに限定される程度についても不明である。我々は青年期のBMIと全原因、糖尿病性、非糖尿病性ESRDのリスクとの関連を評価した。
方法:1967年1月1日から1997年12月31日までに軍事服務のための適性検査を受けた17歳の青少年1,194,704人の医療データを、全国規模の後ろ向きコホート研究において、イスラエルのESRD登録とリンクさせた。1980年1月1日から2010年5月31日までの間に治療を受けたESRDの新規症例が含まれた。Cox比例ハザードモデルを使用して、17歳時のBMIに基づく治療されたESRDのハザード比(HR)を推定した。BMIの定義は、米国疾病予防管理センター(CDC)の年齢および性別によるBMI分類に準じた。
結果:30,478,675人・年(平均[標準偏差]、25.51[8.77]人・年)の追跡期間中に、874人(男性713人、女性161人)が治療されたESRDを発症し、全体の発症率は100,000人・年あたり2.87例であった。正常体重の青少年と比較して、過体重の青少年(BMIの85~95パーセンタイル)および肥満の青少年(BMIの95パーセンタイル以上)は、将来の治療されたESRDのリスクが増加しており、発症率はそれぞれ100,000人・年あたり6.08例および13.40例であった。性別、出身国、収縮期血圧、研究への登録期間で調整された多変量モデルでは、過体重は全原因による治療されたESRDのHRが3.00(95%信頼区間[CI]、2.50-3.60)、肥満はHRが6.89(95% CI、5.52-8.59)と関連していた。過体重(HR、5.96;95% CI、4.41-8.06)および肥満(HR、19.37;95% CI、14.13-26.55)は、糖尿病性ESRDの強力かつ独立したリスク因子であった。過体重(HR、2.17;95% CI、1.71-2.74)および肥満(HR、3.41;95% CI、2.42-4.79)と非糖尿病性ESRDとの正の関連も確認された。
結論:青年期の過体重および肥満は、25年間の全原因による治療されたESRDのリスクの大幅な増加と関連していた。BMIの上昇は、糖尿病性および非糖尿病性ESRDに対する重要なリスク因子である。
◾️コメント
イスラエルでは、兵役適正チェックのために17歳の頃に医療診察を受けるようで、その時の体重と末期腎不全リスクが見られています。過体重の定義…BMI:24.9-28.19(男性)・25.2-25.59(女性)。肥満の定義…BMI:28.2-40.0(男性)・29.6-40.0(女性)となっています。その後、一度もBMIチェックされていないようですが、過去の報告によると思春期のBMIは成人期のBMIに強く相関するようです。過体重・肥満は糖尿病による末期腎不全はもちろんの事、非糖尿病性の末期腎不全もしっかりと増やしています。しかもこの論文の興味深いところは、糖尿病性の末期腎不全リスクに関しては、正常体重範囲内でも体重が増えるほどそのリスクが増えていることにあります。肥満の有病率は高くなっているので、しっかりと重要性を認識しないといけませんね。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)