RSウイルスワクチン(アレックスビー・アブリスボ)
1. RSウイルスとは
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、特に幼児や高齢者に重篤な呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。症状としては、咳、発熱、呼吸困難などがあり、重症化すると肺炎や気管支炎を引き起こす可能性があります。
特に、慢性の基礎疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患、心疾患、糖尿病、慢性腎臓病など)がある人や、免疫機能が低下している人は、RSウイルスに感染した場合、肺炎などを起こすことがあります。
ここでは、60歳以上の方に対する「アレックスビー」と、母子免疫ワクチンの「アブリスボ」の、2つのRSウイルスワクチンについてご紹介します。
2. アレックスビーとは
アレックスビーは、60歳以上の方に対して、RSウイルス感染症の予防に特化したワクチンです。このワクチンは、RSウイルスに対する免疫を強化し、感染リスクを低減させることを目的としています。特に、重症化リスクが高い幼児や高齢者、慢性疾患を持つ方に対して推奨されています。
3. アレックスビーの効果と有効性
アレックスビーは、RSウイルスに対する高い予防効果を示しており、RSウイルス関連の下気道疾患に対するワクチンの有効性は82.6%で、重症のRSウイルス関連下気道疾患の予防に対するワクチンの有効性は94.1%と報告されています(Papi A, et al. N Engl J Med. 2023 Feb 16;388(7):595-608.)。
4. アレックスビーの接種対象・推奨スケジュール・費用
- 接種時期: 60歳以上
- スケジュール: 1回の筋肉注射
- 費用:27,500円(税込)
5. アレックスビーの副作用と注意点
アレックスビーは、一般的に安全性が高いとされています。ただ、注射部位の痛み、発熱、倦怠感などが挙げられます。重篤な副作用は稀です。
6. アブリスボとは
日本では、毎年約 12 万~14 万人の 2 歳未満の乳幼児が RS ウイルス感染症と診断され、そのうち約 4 分の 1が入院を必要とする[Kobayashi Y, et al. Pediatr Int. 2022 Jan;64(1):e14957.]と推定されていますが、今のところ有効な治療薬はありません。 「アブリスボ」は、母子免疫によって新生児をRSウイルス感染症から守るために開発されたワクチンです。出産前に接種することで、生まれたばかりの赤ちゃんにRSウイルスに対する免疫を与えることができます。
7. アブリスボの作用機序とは?
RSウイルスは、新生児や乳児で重症化しやすい感染症の一つです。アブリスボを妊婦に接種すると、ワクチンが母体内で抗体を生成し、その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。この仕組みにより、赤ちゃんは生後6か月間の最もリスクの高い時期に新生児のRSウイルス感染症のリスクを下げることが報告されています[Kampmann B, et al. N Engl J Med. 2023 Apr 20;388(16):1451-1464.]。
8. アブリスボの接種対象・推奨スケジュール・費用
- 接種時期: 妊娠24~36週(28~36週の接種の有効性が高いです)
- スケジュール: 1回の筋肉注射
- 費用: 33,000円(税込)
9. アブリスボ副作用と注意点
注射部位の痛みや腫れ、一時的な疲労感が報告されていますが、重篤な副反応は非常に稀です。
10. アレックスビーとアブリスボの接種の流れ
- 事前相談と予約: 接種を希望される方はお電話でご予約ください。
- 問診と接種: 当日は問診票にお答えいただき、健康状態を確認後、接種を行います。
- 経過観察: 接種後15分ほど待機し、問題がないことを確認します。