2型糖尿病患者における慢性腎臓病に対するセマグルチドの効果
今日から、副院長ブログをはじめてみようと思います!
重要なトピックや、最新の文献(特に腎臓や糖尿病関連)を見ていけたらと思います。まずは、当クリニックでもよく処方しているオゼンピックⓇの論文です。
背景: 2型糖尿病と慢性腎臓病を持つ患者は、腎不全、心血管イベント、および死亡の高リスクにさらされている。セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかどうかは不明である。
方法: 2型糖尿病と慢性腎臓病を持つ患者(推定糸球体濾過量[eGFR]が50から75 ml/分/1.73 m²で、尿中アルブミン/クレアチニン比[mg/g・Cre]が300以上5000未満、またはeGFRが25から50未満で、尿中アルブミン/クレアチニン比が100以上5000未満)を無作為にセマグルチド1.0 mgを週に1回皮下注射で投与する群と、プラセボ群に割り当てた。主要評価項目は、腎不全の発症(透析、移植、またはeGFRが15 ml/分/1.73 m²未満)、eGFRがベースラインから50%以上低下、腎臓関連または心血管関連の原因による死亡の複合イベントであった。事前に定められた確認的な副次評価項目は階層的にテストされた。
結果: 無作為化された3533人の参加者(セマグルチド群1767人、プラセボ群1766人)のうち、中央値3.4年間追跡され、事前に指定された中間解析で早期の試験中止が推奨された。主要評価項目イベントのリスクは、セマグルチド群でプラセボ群より24%低く(初回イベント331件対410件、ハザード比0.76、95%信頼区間[CI] 0.66〜0.88、P = 0.0003)、腎臓特有の主要評価項目の複合についても同様の結果が得られた(ハザード比0.79、95% CI 0.66〜0.94)。心血管死のリスクも同様に低く(ハザード比0.71、95% CI 0.56〜0.89)、副次評価項目もセマグルチドに有利であった。年間eGFRの平均傾斜はセマグルチド群で1.16 ml/分/1.73 m²緩やかで(P<0.001)、主要心血管イベントのリスクは18%低く(ハザード比0.82、95% CI 0.68〜0.98、P = 0.029)、あらゆる原因による死亡のリスクは20%低くなった(ハザード比0.80、95% CI 0.67〜0.95、P = 0.01)。重篤な有害事象はセマグルチド群の方がプラセボ群より低い割合で報告された(49.6%対53.8%)。
結論: セマグルチドは、2型糖尿病と慢性腎臓病を持つ患者において、臨床的に重要な腎臓の転帰および心血管関連死のリスクを減少させた。
■一言コメント
先日出版された、当クリニックでも多くの2型糖尿病患者さんに処方しているオゼンピックⓇについての注目すべき研究結果です。この薬が、腎機能が低下している方(CKD)に対し、腎機能の悪化を遅らせるだけでなく、腎臓や心臓の病気による死亡リスクを抑える効果が確認されました。なぜオゼンピックが腎機能の悪化を抑えられるのか、まだ完全には解明されていませんが、炎症や酸化ストレス、そして線維化を抑える働きがあると考えられています。
オゼンピックⓇは週に一度の注射薬で、最初は自己注射に不安を感じる方がほとんどですが、スタッフの丁寧な指導により、自己注射を行えるようになっております。もしオゼンピックⓇが効果的と考えられる方には、こちらからご案内いたします。注射に不安がある方にも丁寧にサポートいたしますので、ご安心頂ければと思います。
愛知県名古屋市西区
リウゲ内科小田井クリニック
副院長 龍華章裕 (総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析医学会専門医)